谷崎潤一郎は震災で廃墟と化した帝都を逃れて、関西を反時代的な、というのは反近代的な欲望の全肯定によって、現世利益の楽園にする事で開花した、幸福な一回性の美を極めた文豪である。それは今後、二度と反復し得ない憧憬の彼岸にあるという意味において、「源氏物語」の古典的秩序と同列に鎮座するものである。
我々は谷崎文学を所有する事で、様式化される欲望の一切を永遠に喪失してしまった。文化的栄華を極めた民族の常として、われわれは静寂な老いの夢の中でのみ、翼を持って飛翔する美神達とのつかの間の再会を果たす事が可能となるであろう。
略年譜 | 作品・資料文献目録 | 芦屋市と谷崎 (2001.8.26) |
谷崎と映画 (2000.11.2) |
谷崎と女人たち |
以上 工事中_(._.)_