兵庫県芦屋市には谷崎ゆかりの施設や記念碑が、全部で4つあります。ここでは、谷崎のいわゆる古典回帰の時代、文豪が名作を創作した背景を知る手がかりとして、数点の写真とともに紹介しておこうと思います。

(1)細雪の碑 (阪急芦屋川駅より徒歩3分)

昭和13年、六甲の山津波のため芦屋川などの河川が氾濫し、芦屋市は甚大な被害を受けました。この阪神大水害では重さ15トンにもなる巨石が神戸市東灘区岡本の谷崎邸内に流入して、50年間そのままに放置されてあったのですが、昭和63年、谷崎潤一郎記念館の竣工に際して移されました。大水害は 「細雪」の中でも描写されています。

←芦屋川沿いにあります。






(2)詩人・富田砕花旧居(芦屋市宮川町4番12号。阪神打出駅から徒歩5分)
昭和9年から11年まで谷崎は松子夫人とともにここに隠棲していました。昭和11年の谷崎住吉移転後の昭和14年には隣家にいた富田砕花が入居し、その後、93歳で亡くなるまでこの家に    住み続けま した。戦災で多くの貴重な資料が紛失されましたが、倉の中から谷崎の書簡などが発見され、現在、公開されています。また、庭には「細雪源氏の君のかかわりをわが庭に遺す擬春日燈籠」と春日大神に献詠された燈籠 があります。
これが、昭和20年8月の戦災で焼け残った蔵。→
ここは谷崎や砕花によって書斎としても使用され、現在では展示室になっています。また母屋は昭和29年に砕花の友人たちによって再建されました。

入館案内

開館日   日曜日および水曜日

        ただし、年末年始(12月25日〜1月4日)と8月13日〜19日、10月17日を除く。

開館時間  午前10時〜午後4時(入館は3時まで)

※入館料は無料  




(3)倚松庵(神戸市東灘区住吉東町1丁目6番50号 六甲ライナー「魚崎駅」から北へ150m徒歩2分。駐車場はありません。)

昭和11年11月から昭和18年11月まで関西移住後、もっとも長く住んだ借家。「陰翳禮讃」に見られる谷崎の美学が、建築の細部まで具現化されています。
入居の翌年には敷地内に書斎を増築、昭和17年には家主側の都合で立ち退きを要求されますが、そのときに書斎にかかった費用を請求していざこざを起こしています。
谷崎は、松子夫人とその他にも夫人の妹二人もここに寄寓して、昭和11年から16年までの出来事を写実的に描写する事で「細雪」を執筆しています。
なお、現在地へは平成2年に住吉川右岸線道路築造工事のために移築されました。


玄関前にある石碑 正面から 裏側
内部の様子


利用案内

開館日   土曜日・日曜日(年末年始除く)

開館時間  午前10時〜午後4時

※入館料は無料  





(4)芦屋市谷崎潤一郎記念館(芦屋市伊勢町12番15号 阪神芦屋駅から南東へ徒歩約15分。阪急バス緑町下車東へ2分。)

同記念館は、谷崎の業績を顕彰して、昭和63年10月8日に谷崎文学に親しむ拠点として建設されました。和歌山県新宮市にある佐藤春夫記念館とは、二人が生前親しい交友関係にあったことから、 姉妹館提携を行っています。
収蔵資料は約500点に及び、映像資料としてNHKテレビ番組「ここに鐘が鳴る」(昭和34年11月出演)を見ることが出来ます。





←正面入口

阪神大水害で谷崎邸に流入した巨石。
記念館前にある。→
←内部の様子→
右は「谷崎潤一郎氏の肖像」
安田ユキヒコ画。
昭和39年春の制作。
庭園は、関西最後の住居である京都の旧居の庭を模して再現したもの。
美しい鯉は心を和ませます。


入館案内

開館時間 午前10時〜午後5時(入館は4時30分まで)

観覧料 一般 300円  高・大学生 200円  中学生以下は無料
市内在住の65歳以上の方、障害者(介護者含む)の方は半額
特別展のときは別料金になる事あり

休館日 月曜(月曜日が祝日のときは翌日)
年末年始(12月28日〜1月4日)、展示替え等の期間

※駐車場は美術博物館(20台)、図書館(47台)を利用できます。







以上 色男NO.1記(写真も)