(^.^)さん、「文藝春秋」2月号から横尾忠則のコメントを引用され、その現代日本における芸術の衰退という悲観的な認
識に対して大いなる期待感を述べておられる事に深く感銘いたしました。私自身、常に現在に密接に関与する事で過去の遺産を風化させること
なく継承したいと考えますので、本当に勇気付けられる思いがしました。
^/^さん、私も全く同感であります。三島の文学は母子密着のたおやめぶりの文学であります。元来が官僚制に相容れぬ美
意識の持ち主なんですね。「絹と明察」における父の問題は天皇の問題であります。
(__)さん、死体の偏愛が「死は美に通じる」という金色の死に近い思想であるのかという事ですが、「ナルシシズム論」
で三島はナルシズムは男性に特有の精神的傾向であり、女性には見られないものであるとしているように、美との相関関係において、自らが疎
外されているとはどうしても考えられないパーソナリティーを露見させているという意味において、学術論文というよりは三島という天才の謎
を解明する上で病跡学的研究に一資料を提供するものであると言えます。死体の偏愛をネクロフィリアと規定するならば、溺愛する側はむしろ
死体=美から疎外される側にあるものであり、ナルシズムの問題が抜け落ちてしまいます。三島は、自らが死体=美として偏愛される為に「他
者」を必要としたのであり、ある種の人にとって彼の自殺が演劇的装置に満ちたパフォーマンスと映るのも、その為であります。
●色男NO.1(145) 題名:80年代のユーミン
みなさん、こんにちは。私が色男NO.1です。今回で3回目のユーミンシリーズは80年代絶頂期のユーミンがいかに時代にフ
ィットしたかについて言及しています。
80年代を歴史的に回顧する作業が今後行われる事となるでしょうが、中でもユーミンは最も重要なキーワードの一つに挙げ
られることでしょう。
'76年に結婚するものの、夫のおかげで最強イニシャル「Y.M.」をゲットしたユーミンは村上春樹ばりに1970年を世界の終
わりの始まりと規定し、サザエさんやゴルゴ13よろしく反復の時代に寄り添って年を取らない永遠の少女という名の宇宙人となった。時代のナビ
ゲーターとして風俗の表層をキャッチーなトレンドに転換しながら追尾しつつも、音楽する主体はあくまで時のないホテルの住人、少女としての
ユーミンである。ブランド名が頻出する歌詞世界はやがて来る80年代を先取りするものであったし、文壇にさえキャンティ族の田中康夫なる派
生商品を生み出すユーミンはもはや時代の寵児であり、かつての三島由紀夫と戦後という黄金時代のパロディとして、「80年代」は空前のバブ
ルへと突き進んでいく事となるのは周知の事実に属する。
'78年の「流線形'80」はそのタイトルからも満鉄が世界に誇った最速の蒸気機関、特急あじあ号をイメージさせるが、そ
のレトロティック且つスピード感あふれる言語表現は早くも'80を冠して、歌謡曲を旧時代へと置き去りにしていくかのようだ。クルマはあくま
で助手席専門のユーミンは'79年「OLIVE」というファッション誌かアメリカンコミックのキャラクターの名前を想起させるタイトルを前面
に押し出す事で、不在の男性、ポパイを強烈にあぶり出してもいる。'80年の「SURF&SNOW」はユーミンシーズンを設定する事で、若者
層をクリスマスイブやバレンタインデー等の各種イベントに動員する機動力となり、華麗なる第二次ブームを見事に演出している。限りなくア
クティブな「雪国」の世界へと踊り出して、素敵な彼氏をゲットしたい・・・・・。それまで冬と言うとコタツの中で猫と一緒に丸くなり、餅や
らミカンを食っていた人々にさえ、個人消費を大幅にアップさせ、日本国中に恋愛の福音をもたらしたユーミン。その独走はとどまる事を知らな
い、かつての三島由紀夫がそうであったように。
一年に一枚のコンセプトアルバムは必ず11月25日前後1ヶ月の間にリリースされ、今は亡き彼へのレクイエムを常に新しい
ものへと更新するための聖なる儀式である。
投稿日 : 2000年1月23日(日)16時14分
●色男NO.1(99) 題名:M&Dの西鶴世話物つながり
こんにちは、みなさん。私が色男NO.1です。
はじめまして、(^。^)さん。今後ともよろしくお願いします。
早速ですが、三島について何か面白い本を紹介して欲しいとの事で、それでは例によって、「M&D」の方法論にのっとり、
太宰との比較によって、興味ある項目を少しばかり指摘しておくことにします。昭和19年と言えば、天才少年三島の最初の本が出版された年です
が、では、この年に太宰がなにを書いたかと言えば、「津軽」を出版し、「新釈諸国噺」を執筆(出版は翌年)したりしていたのです。この「諸
国噺」は太宰自身が凡例で記すとおり西鶴の翻案物なのですが、とにかく西鶴を褒めちぎっては世界で一番偉いとまで言い、その一方で、古典
の現代訳なんて意味がない、好色物は好きでないなどとしていて、谷崎源氏や戦時下の言論統制のエピソードなど想起されて、凡例の最後まで
通読すると、「昭和聖代の日本の作家に与えられた義務と信じ、」等の文章から,銃後の生活も大変だ、と色々行間に書いてない事まで読めて
しまう訳です。「惜別」もそうですが、中期の太宰は題材選びに慎重で、やはり憲兵政治がいかに恐ろしいものだったか推して知るべし、といっ
た感じです。ところで、この「諸国噺」ですが、十二本の短編が入っていて、大力というのが本朝二十不孝から選ばれてあるのですが、これは
西鶴45歳の作とあり、その物語に及んでは、あの「ロマネスク」で書かれた喧嘩次郎兵衛が不道徳ゆえに懲らしめられるといった教訓話で、文
体などなるほど太宰調で面白いのですが、やはり、今ひとつの不満が残るのは否めません。遊興戒でも大力と同様に私のような色男(笑)が遊び
の報いで落ちぶれて、昔の遊び友達もそれを見ては白けてしまって、もはや遊ぶ事も出来ぬ、といった筋なのですが、これなどもやはり「ロマ
ネスク」の仙術太郎、即ち太宰は道徳的な日本臣民の反面教師だよ、事のついでに言っておきますと、この遊興戒は「西鶴置土産」、没年の作
品なんですね。これは笑えないものがあります。それでは、天才少年三島は西鶴を使って何か書いたものがあるのかというと、今読んでも素晴ら
しく面白い「不道徳教育講座」が西鶴の「本朝二十不孝」のパロディーとしてあるのです。「西鶴諸国咄」「本朝二十不孝」共に説話物で、M&
Dは西鶴説話物つながりなんですね。
ちなみに三島は、西鶴の全作品の中で詩的絶頂と言えるのは、武家物の「男色大鑑」であると言っています。三島ビギナー
の方には、小説ではありませんが、とにかく理屈抜きに面白い「不道徳教育講座」をお薦めします。これを読んで、よく知らないんだけど、三島
と言えばアレかな、という固定観念を一度解体してしまうとよいでしょう。
太宰研究の世界で知らぬ者はいない文芸批評家奥野健男は、実は三島と大の仲良しだったのです。食わず嫌いは文学もグ
ルメ同様、世界観を箱庭式に限定してしまって、もったいないですよね。こいつを一度、食ってしまおうという好奇心があなたを未知なる世界へ
と誘ってくれるのです。
投稿日 : 2000年1月30日(日)17時50分
●色男NO.1(114) 題名:「天国に結ぶ恋」を超えて
こんばんは、私が久しぶりで自らの管理する掲示板へ帰ってきた色男NO.1です。みなさま、大変ご無沙汰しております。
私は、最近、ユーミンファンのみなさまと恋愛をテーマに親交を深めており親しい友人も沢山出来て充実した日々を送っています。私のユーミ
ンシリーズ第4弾は本来ならば音楽の国掲示板に書き込みするのが妥当かと思われるのですが、豪傑NO.1が管理する映画の国が少し寂しいよう
に思えて竹馬の友の私としては、これを支援してやりたく思い、映画の国掲示板に書き込む事にします。よろしければ併せてご覧頂ければより
一層のユーミン通になられること請け合いです。
私のユーミン教布教活動は郷ひろみのゲリラライブのような確信犯的方法を採用しましたので、ユーミンファンの皆さん
の反応がいかなるものか多少の不安があったのですが、さすがにユーミンファンは理解力のある方が多く、私の布教活動も「ひょうきん族」の
ざんげ室みたいなジョークと受容して頂いたみたいで、大変感謝しています。
(@_@)さん、はじめまして。
三島の「海と夕焼」をお読みになったという事で、この作品はある意味、ユーミン教の奥義を集約するものでもあります
ので、これをユーミンと関連づけて何かお感じになったという事に、私も心底驚きました。「海と夕焼」は主人公のキリスト教から仏教に至る
宗教の変遷と奇跡待望の問題が見事に物語化されていますが、ユーミンも少女時代にはキリスト教的感情教育下にあり、三島を聖別の対象とし
て自殺さえ考えるのですが、「翳りゆく部屋」にあるように、生きる事となる訳です。魂の不滅、そして生まれ変わりの思想によって自殺の必
要性が無化され、つまりキリストの再臨に自らが遭遇し得るという奇跡待望が「千一夜物語」のように、♪あなたにふられた日から魔法を手に
入れた、と歌われているのです。「リ・インカネーション」や「カトマンドゥ」の世界観、宇宙的スケールの中で、ユーミンのペシミズムは完
全に癒されたのですね。
ユーミンワールドは信仰告白がテーマとしてあり、音楽技術的には様々な変化や発展が見られるユーミンも、テーマの上
では同じ一つの「信仰」を物語り続けており、その辺が口の悪い評論家から「マンネリズム」と批判される部分でもあります。しかし、信仰と
いうものはあらゆる発展史観の果てにあるところにジャンプする技術でもあり、そこがユーミンの社会科学や革命幻想にコミットしない理由で
もある訳です。遠藤周作も「沈黙」から「深い河」へと同様のコースをたどっている事は注目に値する事と思われます。このようなメカニズムを
了解する事において、初めてユーミンがユーミンである限り、永遠の少女であり続ける理由が理解されるのです。ちなみに「海と夕焼」はアン
チ三島で知られる梅原猛も好きな作品であるようです。ユーミンはひたすら時間旅行の旅人と再会できる奇跡を信じ、それをエネルギーに変え
て時代のシャーマンであり続けているのです。
投稿日 : 2000年2月20日(日)00時58分
●色男NO.1 題名:ユーミンの分身たち 投稿日 2000年2月20日(日)01時51分
皆さん、私がユーミン教宣教師色男NO.1です。ユーミン教とは信仰にまで高められた恋愛至上主義なり。一度でも恋愛し
たことのある人なら誰もが信者になってしまう恐るべき増殖力を秘めた宗教なのです。それでも人はまぶしすぎる真実に信じがたい気持ちがし
たり混乱してしまったりする事は多々あります。布教活動にあって、時には「奇跡」を示す必要性を痛感した私は、以下のユーミン自身による「告白」を記します。
月刊カドカワ1993年1月号総力特集「ルージュの伝言・第二章」
質問「既に他界している人で、一人会えるとしたら誰に会いたいですか?」
答「三島由紀夫」
ダ・ヴィンチ2000年1月号 松任谷由実「スピリチュアルな10冊」
「なんかもう、質感が好きっていうのがありますね。中でもこの『仮面の告白』にしたのは、三島のヰタ・セクスアリス的なコワ面白さもある
から。でも本当に三島がホモセクシャルだったかどうかはどうでもいいの。私、福島次郎の『三島由紀夫剣と寒紅』も読んだけど、巻き込んじ
ゃうのはどうかなと思った。作家の個人的な生活はどうでもいい。(略)」
今年は菅野美穂主演の映画「守ってあげたい」も封切られますが、これはそのものズバリ女性自衛官のストーリー。ユー
ミンの「ひこうき雲」に収録された「恋のスーパーパラシューター」は三島の自衛隊体験入隊とパラシュート降下を連想させ、♪たった一つの恋
の真上に〜落ちて〜いけた〜ら〜死んで〜も〜いいわぁ〜、とデミ・ムーアの「GIジェーン」さながらのジャンヌダルク風の力強い女性像を描い
ています。「ひこうき雲」だって死のイメージが鮮烈にあり、神風特攻隊がピンときます。三島は学徒出陣世代ですから。もう一つおまけ、椎
名林檎のニューシングル「罪と罰」は、ユーミンの「紅雀」収録の「罪と罰」と同名タイトル、内容はぜんぜん違いますが、林檎はビデオクリ
ップの中で眉毛を剃り落とし目の周りを真っ黒にメイクして、日本刀を鞘から抜き、自らの愛車メルセデス・ベンツを真二つにしています。彼女
がユーミンの「翳りゆく部屋」をカバーしているのをご存知の方は多いと思います。
●色男NO.1(119) 題名:黒澤明、ユーミン、手塚治虫
こんばんは、みなさん。私がスタッフAこと色男NO.1です。
§^。^§さん、お久しぶりです。M&DをD&Mに変更して欲しいと言う一途な思いはユーミンの恋愛至上主義にも通じる情熱
であるかと思われます。ユーミン大好きの吉本ばななは太宰ファン、柳美里もまた太宰ファンですね。今回、上杉さんが書き込んで下さった手
塚ネタは面白く読ませて頂きました。実は、私も手塚と三島には何かある、前々からにらんでおりまして手塚作品も漫画文庫などを通して何冊
か実際に読んでみました。手塚は負けん気が強いというか優れた表現者に対しては例え後輩であっても激しく嫉妬する人であったというエピソ
ードは有名です。自分が一番でなければ我慢できない、誇り高い人なんですね。「火の鳥」は白土三平の「カムイ伝」に対抗して書いたといい
ますし、梶原一騎に代表されるスポ根物に対しては露骨に敵意を剥き出しにし、「ゴルゴ13」などの劇画に対抗して「ブラックジャック」を書
いたというエピソードも知られています。
その手塚がある意味最もライバル心を燃やした同時代の天才が三島なんですね。そのことに言及した本がありますので参
考までに紹介しておきます。
「手塚治虫氏に関する八つの誤解」(長谷川つとむ、中公文庫)
第二章 三島由紀夫とは対蹠的であるという誤解
著者は、二人の相似形について語り、両者を反時代的生き方を貫いた天才であるとしています。「三島はナルシストといった尋常なものでは
なく、ナルシスそのものだった。」
「手塚治虫─時代と切り結ぶ表現者─」(桜井哲夫、講談社現代新書)
「一生のライバルとしていたのが作家の三島由紀夫氏。考え方はまるで違うが、三島作品を読むと、なんとなく性格が似ているように感じていたとか。あまり会って話すこともなかったが、ずっと意識していた。」これは、著者が「思い出の手塚治虫先生」から引用している文章の孫引きです。
以上のように、研究者の間ではかなり把握されている事実なんですね。三島は、UFO観測サークルに入っていたのですが一
度もUFOを見た事がなかった。それを嘆いている本人に手塚は嬉々として僕はUFOを見た事がありますよと自慢したそうです。手塚治虫は少年の
ような人だったんですね。ちなみに、吉本ばななは手塚よりも藤子不二雄の方が好きであるという事です。
投稿日 : 2000年3月5日(日)06時34分
● 色男NO.1(167) 題名:ユーミンと中島みゆき
^_^;さん、)^o^(さん、はじめまして。
これからも、どうぞパラダイスをごひいきにお願いします。
楽しい話題大歓迎です。皆様、私がユーミン教宣教師こと色男NO.1です。ユーミン教とは信仰にまで高められた恋愛至上
主義なり。一度でも恋愛をした事のある人なら誰もが信者になってしまう恐るべき増殖力を秘めた宗教なのです。
ニューミュージックの女王ユーミンの独り勝ちに対して、マスコミの話題作りであったのか、様々なライバルを演出して
業界の活性化に努めんと画策した訳であるが、やはり真にライバルと呼び得るのは中島みゆきをおいて他にはいないだろう。拓郎・陽水がフォー
クの一時代を築いた'75年にデビューした中島みゆきは圧倒的存在感で独自の世界を作り出した。
みゆきの場合、音楽的評価はもとより、文学的にさえ評価され、現代詩人と同列の文脈で論評されたりもした。音楽評論
家の田家秀樹は、そんなみゆきに太宰治を重ねている。彼女が太宰に対して、どのようなスタンスを取っているか定かではないが、みゆきの言
語感覚、世界観には太宰との類似性が認められるのである。殆ど対極と言いたいほどのユーミンとみゆきは絶妙なコントラストを描いて、時代
を二分していた。
そんな二人は「週刊FM」1982年3月1日号で対談している。当時、みゆきは吉野屋の牛丼に異常に凝っていて、ユニホーム
まで着ていて、ユーミンに衝撃を与えたという。長靴まで揃えているコスプレぶりにユーミンも見習って、必死に考えて、自分はミスター・ドー
ナツでいこうと結論した。
♪冷えだした手のひらで包んでる紙コップはドーナッツ屋のうすいコーヒー、二人は半分ふざけながら対談を楽しんでい
るが、案外、二人の個性がよく現れているエピソード足り得ているのが興味深い。
氷室京介がかつてユーミンを新しい時代における美空ひばりと例えた事があったが、みゆきはと言えば、太宰の同時代人
淡谷のり子であろうか。現代のカリスマ椎名林檎を言語表現の才能に関しては、みゆき以来の天才と評する声も多い。
(お願い)
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キング」は目次ページのバナーをクリックすると、当ページのカウントとして計算されるようです。「音楽・映画部門」にありますので、お暇な
折によろしくお願いします。
投稿日 : 2000年3月25日(土)19時17分